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森 智勝(もり ともかつ) <プロフィール> 全国学習塾援護会 主宰、塾生獲得実践会 代表 ・26歳で学習塾設立、7教室を経営する。 ・平成14年 塾専門のマーケティング勉強会「塾生獲得実践会」設立 ・平成18年 「全国学習塾援護会」設立 ・現在、全国各地で塾経営者を対象としたセミナーの講演、スタッフ研修に奔走。 全国私塾情報センター主催の「春季大都市縦断セミナー」「地方塾セミナー」に講師として参加。 机上の空論ではない具体的な内容と、参加者にプラスのエネルギーを生じさせる講演には定評がある。今、最も支持されている塾経営アドバイザーの一人。 |
これからお話しすることは、セミナー等で何度も紹介している話です。
「長淵剛(敬称略)の話」
で了解できる方はとばしていただいて構いません。
地元のFM局が開局10周年を迎えました。
その日は10周年を記念する番組が目白押しだったのですが、
目玉は長淵剛のトークライブです。
スタジオに抽選で当たった200人を招いての生放送でした。
女子アナとの軽妙なやりとりが続き、放送時間も残りわずかとなったところで
アナウンサーがリクエストします。
「今日は長淵さんのファンが200名、スタジオに詰めかけています。
一曲、ご披露いただけませんか?」
気軽に応じた長淵は、ギターを取り出し弾き語りで歌います。
曲のエンディングに合わせて、番組は終了しました。
まあ、ここまでは予定調和です。
あらかじめシナリオが出来ていたのでしょう。
ところが…
歌い終わった長淵は、スタッフに番組が終了したことを確認して
聴衆に言いました。
「さあ、これからが本番だよ!」
何と長淵は、わずか200何人のために1時間、7曲を歌ったというのです。
聴衆は狂喜乱舞、涙を流している人もいます。
それはそうでしょう。
1曲くらいは歌ってくれるだろうという期待はあったと思います。
ところが、それを大きく上回るパフォーマンスを長淵は披露したのです。
きっと200人の聴衆は、この日のことを一生忘れず、
だれかれと語り続けることでしょう。
私はこの話を、翌日の中日スポーツの芸能欄で知りました。
記事を読みながら、感動のメカニズムに気付いた瞬間です。
例えば、これが8,000円を支払ったコンサートだったらどうでしょう。
1時間・7曲でステージを降りてしまったらブーイングの嵐だと思います。
同じ1時間・7曲なのに、この違いはどうして生じるのでしょう。
それは期待値の差です。
抽選に当たり、無料で出掛けたトークライブと,
8,000円を支払って出掛けたコンサートでは聴衆の期待値は違います。
130円を払って缶コーヒーを買った人は、130円分の期待値を持ちます。
コーヒーを飲んで130円分の価値を感じたとき、人は満足と表現します。
しかし、満足の段階では人は次の行動に移すことはありません。
なぜなら、130円を払っているのだから,
130円分の満足を得るのは当然だと考えているからです。
期待値を超えた部分、それを感動と呼びます。
人は感動することによって次の行動、(ビジネスで言えば)リピーターとなり、口コミ・評判を拡げる人になります。
相手を行動させるためには感動を提供すること、
つまり相手の期待値を超えることが必要なのです。
ここから導かれる結論は、
「できる限り相手の期待値を低く抑えておくことが重要だ」
ということです。
ところが、多くの塾が逆のことをやっています。
例えば入塾面談の場で…
「…その時は理解できるまで塾で居残り授業をします」
「…分かりました。家庭学習用の教材を提供しましょう」
「…日曜日も必要に応じて補習をします」
「…弱点を補強する個別の教材を準備します」
そんな約束をしていないでしょうか。
これでは相手の期待値は上がる一方です。
その期待に応えて当たり前、
一つでも答えられなければ期待外れということになります。
そんな約束はせずに、
居残り学習も休日補習も個別教材の提供もしなければなりません。
以前、某大手塾が退塾者の追跡調査をしたことがありました。
退塾理由のトップは、成績不振を抑えて、
「教師が信用できない-約束を守らない-」
でした。
待値を上げれば上げるほど、約束を破るリスクは高くなります。
「面倒見の良い塾」という評判を作るためには、
事前に相手の期待値を上げないことが必須です。
誤解のないように付言しますが、ここで言う期待値とは、
「個別具体的な期待値」
のことです。
この塾なら何とかしてくれるかもしれないという抽象的な期待値は必要です。
それこそが、
「あの塾は面倒見が良い」
という評判なのです。
塾生獲得実践会(全国学習塾援護会)
森 智勝