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森 智勝(もり ともかつ) <プロフィール> 全国学習塾援護会 主宰、塾生獲得実践会 代表 ・26歳で学習塾設立、7教室を経営する。 ・平成14年 塾専門のマーケティング勉強会「塾生獲得実践会」設立 ・平成18年 「全国学習塾援護会」設立 ・現在、全国各地で塾経営者を対象としたセミナーの講演、スタッフ研修に奔走。 全国私塾情報センター主催の「春季大都市縦断セミナー」「地方塾セミナー」に講師として参加。 机上の空論ではない具体的な内容と、参加者にプラスのエネルギーを生じさせる講演には定評がある。今、最も支持されている塾経営アドバイザーの一人。 |
前回まで「集団指導はつまらない授業ではなく楽しい授業を目指せ」とお話してきました。
では、生徒にとって楽しい集団授業とは何でしょう。
これまで論じてきた「辛くつまらない授業」の逆を目指せばいいのです。
まず第一に、授業自体に変化・抑揚を付け、生徒に飽きさせない工夫をすることです。
以前、授業力コンクールで優勝した塾教師の授業例を紹介したことがあります。
初見の方のために再掲します。それは中学2年生の英語/助動詞の内容でした。
彼は、mustとmayの意味の違いを説明するために、
自分の写真を大きく引き伸ばしたパネルを用意して生徒に語り掛けます。
「いや、昨日な~、僕の家に泥棒が入ってな。
そんで容疑者が捕まったから警察に来てくれと言われたんや。
実は帰宅したときにバッタリ、逃げていく泥棒とぶつかったので、
こっそり容疑者の顔を見てくれということなんや」
ここで教師は自分の顔写真(目のところに黒い帯)のパネルを出します。
生徒が「ワ~」と歓声を上げます。
「でな、コイツが犯人かもしれないと思ってな。警察には言ったんや。
そうしたら、実はもう一人容疑者がいるというので、そいつの顔も見たんや」
もう1枚のパネルを出すと、生徒はより一層の歓声を上げます。
どうやら、数学を担当している教師の写真のようです。
「もう、この顔を見た瞬間、泥棒はこいつに違いないと確信してな~」
クラス中が大笑いに包まれて、教師は
「~かもしれない」「~にちがいない」の英語表現について解説を進めました。
さて、あなたの塾は英語の助動詞をどのように教えているでしょう。
黒板にmustと書いて、
「これは~しなければならない、~にちがいないという意味です」。
mayと書いて、
「これは~してもよい、~かもしれないという意味です」
と教えても、何の間違いでもありません。しかし私は断言します。
あのパネルを利用した授業を受けた生徒は、しっかりと意味の違いを刻み付けただろうと。
もしかしたら将来、意味は忘れたとしても、あの楽しい授業は一生覚えているだろうと。
後者の授業をするのに、事前準備は必要ありません。教師は楽です。
前者の、パネルを使った授業のためには、若干の準備作業が必要です。
と言っても、自分の写真と数学教師の写真(もちろん了解の上で)を
拡大印刷してパネルに貼るだけです。ほんの数分です。
しかし、この数分を惜しむか惜しまないかで雌雄は決します。
私が
「授業の予習をしましょう」
と言うと、
「いや、もう何年も教えていますので、分からない問題などありませんよ」
と答える塾教師がいます。
そんなことは当たり前です。
その「あなたにとっては当たり前に解ける問題」を、
いかに分かりやすく、いかに印象的に教えるか、
そこに時間を使いましょうと提案しているのです。
多くのベテラン教師が、行き当たりばったりの授業をしています。
それでも通用する手練手管(テクニック)は持っています。
しかし、そこに安住して工夫や研鑽を忘れた教師(塾)は、見捨てられる運命を辿ります。
今回紹介した授業を「劇的指導法」と言います。
強烈な印象を生徒に与え、その印象と共に知識を脳に刻み付ける手法です。
多くのカリスマと呼ばれた予備校講師が用いています。
とにかく、1回の授業で1度は大きなインパクトを生徒に与えることです。
また、何か別のことと関連付けた方が記憶しやすいという脳の特性を利用することで、
学習効果を高めます。
抑揚(変化)のない授業は、生徒の記憶に残りにくく学習効果は低くなります。
まず、変化に富んだ授業を目指してください。
そのためには、多少の予習(工夫)が必要です。
次回は、その予習についてお話します。
塾生獲得実践会(全国学習塾援護会)
森 智勝