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2018年 7月 9日
石上 誠(いしがみ まこと) 個別指導塾専門コンサルタント 塾長スクール 代表 有限会社 明誠館 代表取締役 ■早稲田大学商学部卒業。学習塾勤務の後、アメリカで半年間の「語学留学&放浪の旅」を経て、27歳で愛知県安城市に小中学生対象の学習塾「明誠館」を開校。
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サッカー・ワールドカップ日本代表の健闘は素晴らしかったですね。戦前の予想を大きく覆す「嬉しい大番狂わせ」による予選リーグ突破。そして決勝リーグでは、優勝候補のベルギーを崖っぷちに追い詰める豪快な2ゴールで、一時は「史上初のベスト8進出か?」という「夢と希望」を私たちに与えてくれました。
さて、7月後半から夏休みに入ります。地域によって若干の違いはありますが、約6週間という文字通りの「長期休暇」です。どの塾も夏期講習を迎え、経営と教務の両面からも一年で一番大切な時期と言えます。
あらためて解説を加えるならば、個人経営の塾における「経営面からの夏期講習の意義」は、塾長先生自身の「夏のボーナスの源泉」でしょう。また社員や常勤講師を雇用している法人経営の塾の場合、塾長先生自身ではなく「社員のボーナスの源泉」となります。
ご承知のように、法人の社長はボーナスをもらえませんので、経営面からは「社員のために夏期講習を行っている」とも言えます。しかし、一生懸命に頑張ってくれる社員のモチベーション維持のためには、ボーナス制度は欠かせないのが現状ですね。
ちょっと下世話な話になりましたが、「安定した売上げ」があってこそ塾運営が成り立ちます。1年を通して見た場合、夏期講習のある8月は真面目な意味での稼ぎ時です。「生徒の目標達成のサポートをしっかり行い、その対価としての高い報酬を戴く」という、直球勝負の経営方針で行きましょう!
そして「教務面からの夏期講習の意義」は、もちろん「前学年の復習や今年の1学期の復習」です。特に中3は原則として部活も引退するので、受験に向けての本格的な実力養成のスタート時期になります。昼間からタップリと時間が取れるので、日頃の授業ではできない「基礎固め」や「弱点補強」には最高の時期です。
また、中1・中2で履修した理科・社会の範囲は膨大な量ですが、中3になってから学校の授業では全く復習してくれません。しかし入試問題は、中1・中2の範囲が3分の2を占めることになります。結論から言えば、この夏休みから復習を始めていかないと、来春の受験には間に合いません。
とは言うものの、夏期講習だけで入試5教科の全範囲の復習ができる時間はとても確保できませんから、
・9月~12月にかけては、土曜の午後や日曜を利用した「中3秋期講習」
・1月の学年末テスト終了~公立高校入試にかけては、過去問題を使った「入試直前講習」
というように、中3生においては「夏休み~受験までの半年間に渡る計画的なカリキュラム」が不可欠となってきます。
ところが、季節講習で一番多く時間が確保できる「夏期講習」の取り組み方は、塾によってまさに千差万別です。もちろん塾長先生なりの戦略や戦術があっての取り組みなら問題ないのですが、首を傾げたくなるような話も見聞きします。
例えば、夏期講習を自由参加にしている塾があります。特に個別指導塾に多く見られるケースです。中3は受験生なのに、教科数や時間数を選択できる塾がかなりあります。さすがに最低限の時間数はノルマにしていますが、少ない生徒だと1~2教科だけ、合計受講時間も10時間未満。これだけで一体何を復習できるというのでしょうか? さらに、中1・中2に至っては自由参加です。つまり、「夏期講習0時間」の生徒もいるということです。
塾長先生に話を聞くと、「いやあ、もちろん全員参加して欲しいのですが、夏期講習の申込書を出してくれない家庭も何割かあるんですよね。日頃のお母さんの話を聞いていると、なかなか通常授業プラス2~3万円の講習代をお願いしづらくて・・・」とのこと。
「その生徒たちの英語や数学の成績はどうですか?」と尋ねると、「自慢になりませんが、定期テストは平均点あれば上出来。内申点は3か2。なかには1の子もいますよ」という返事。失礼ながら予想通りの成績です。
ましてや、このような塾では、前述した「中3秋期講習」など実施していないケースがほとんどです。
「少ない時間の中3夏期講習」が終わったら、冬期講習まで入試5教科の復習をしない塾。この貧弱なカリキュラムで受験を突破できる実力養成ができるなら、生徒も先生もこんなに楽な話はありませんよね。
さて、ついつい辛らつな表現になりましたが、ここで問題点を整理してみましょう。まず保護者側の問題点ですが、こういう生徒の保護者は、塾に通わせる目的が曖昧です。「成績が下がったから塾に通わせる」、「友達が行っているから、その塾に変わる」、「成績が上がらないから、塾を辞める」、といった具合に目先の出来事や周りの変化に釣られて右往左往するばかり。塾に通う以前に、受験や勉強を「舐めている」のです。
過去の私自身やクライアント塾の失敗例を見ると、講習を積極的に受講しない保護者は「塾に通わせることが目的」になってしまっています。保護者(ほとんどの場合、母親)の心理は、次のような感じでしょう。
「ウチの子、勉強が好きじゃないから、大学なんて行かせなくていいかな。お金もかかるし」⇒「中1になったけど、まだ急いで塾に通わせる必要もないでしょ」⇒「中2になって、成績がかなり下がってきたけど、このままで大丈夫かしら」⇒「学校の懇談会で先生から、『今の成績だと公立の普通科は難しい』って言われちゃった」⇒「ママ友に聞いたら、保護者の義務感からみんな塾に通わせているみたい」⇒「でも家計が楽じゃないので、とにかく安い塾を探そうかな」⇒「友達のいる塾なら行くって言うから入塾したけど、あまりやる気がないみたい。とりあえず通常授業は1教科(週1回)だけでいいや」⇒「塾から手紙が来たけど夏期講習って、受けなきゃいけないの? エッ、全部受講したら、通常授業料と合わせて8月は5万円! そんなのムリムリ」・・・・・・。
そして、こういう保護者の言いなりになっていることが「塾側の問題点」です。では、どのように対応すればいいのでしょうか? 私は塾長先生に次のようなアドバイスをしています。
・「季節ごとの講習(夏期講習・定期テスト対策講習・冬期講習・中3の秋期講習・入試直前講習など)は学年を問わず、有料で全員参加させること」
・「各講習は同一学年において、全員同じ時間数を受講させること」
・「その同じ時間数の中で、生徒の学力や目標に応じて教科数や内容を個別にコーディネートすること」
そして、「これが『プロの個別指導塾』の基本姿勢です。教科数や時間数の主導権を生徒や保護者に委ねたら、ワガママに振り回される『素人の個別指導塾』になってしまいますよ」と補足します。
すると、塾長先生は、「石上先生、それができたら理想の塾になりますよね。でも、そんなことを提案したら、保護者から総スカンを食らいませんか?」
もちろん、いきなり方針転換したら退塾者が続出するでしょう。
そこで解決策のヒントになるのが、「今回のワールドカップの日本代表」・・・・・・つまり「夢と希望を与えること」です。もちろん塾長先生が夢と希望を与える相手は、生徒と保護者です。具体的には、入塾前の初回の面談が勝負を決めるポイントになるのですが、詳しくは次回のブログでお話しします。
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