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森智勝先生の「地域1番塾への道」vol.77

森 智勝(もり ともかつ) <プロフィール>

全国学習塾援護会 主宰、塾生獲得実践会 代表

・26歳で学習塾設立、7教室を経営する。

・平成14年 塾専門のマーケティング勉強会「塾生獲得実践会」設立

・平成18年 「全国学習塾援護会」設立

・現在、全国各地で塾経営者を対象としたセミナーの講演、スタッフ研修に奔走。

全国私塾情報センター主催の「春季大都市縦断セミナー」「地方塾セミナー」に講師として参加。

机上の空論ではない具体的な内容と、参加者にプラスのエネルギーを生じさせる講演には定評がある。今、最も支持されている塾経営アドバイザーの一人。

 

「地域1番塾への道」2021.8月号-退塾防止№1の塾を目指して 実践編①

前回まで退塾防止の概要についてお話ししました。今回からは実践編です。

一般的な顧客離れの原因は、「飽きる」「忘れる」「卒業する」だと言いました。加えて、塾独自の原因として「成績不振」と「信頼できない」を挙げました。1つ1つ、その対処法を考えてみます。

顧客離れの原因の中で、絶対に避けられないのが「卒業する」です。中学3年生、高校3年生には文字通りの卒業があります。そして、この学年終了時に塾を去ることを「卒塾」と呼び、納得している塾が多いものです。しかし、高校部が存在するのに中学卒業を機に塾を離れるのは、やはり退塾と捉えるべきです。そして、中3生が高校部へと継続通塾する方策を講じるべきです。ただ、今回のテーマは別のところにあります。

かつて、塾(特に中小・個人塾)の対象となるボディゾーンは小学5年生~中学3年生の5学年でした。実に狭い範囲の顧客対象です。そのため、卒業が塾としての顧客離れの最大の原因でした。多くの塾が「卒業」によって大量の顧客離れを生じさせていました。中には半分近くの生徒が3月に消滅する塾もあります。春になると毎年のように、消滅した生徒数を新規確保できるか、冷や冷やして過ごす塾経営者も多いのではないでしょうか。それでも、まだ地域の子供の数が多かった時代は救われていたのですが、少子化が定着してしまった今、何もしなければ塾生数がジリ貧になっていくのは避けられません。

本来、「卒業」のインパクトを小さくするため、卒業までの滞留年数を延長する方策を模索するべきでした。対象学年を5年ではなく10年以上にすることです。つまり、小学1年生~高校3年生までを指導できる体制を構築すべきです。そのことによって卒業に伴う顧客離れのインパクトを小さくするのです。特に今、高校部の拡充は塾の生き残りにとっては必須の課題です。そして中学3年生を高校まで継続させることで卒業による退塾を防止するのです。

こうした提案をすると昔は、「いやいや高校数学の指導をする力が私にはありません」とか、「田舎ですので、高校部を指導できる優秀な大学生が確保できません」など、指導スキルの問題が大きかったものです。しかし今は、様々な優れた映像教材や学習ソフト、カリキュラム作成システムが安価に提供されています。塾の現場に指導スキルが存在しなくても高校部の運営が可能な時代です。また、昨今の大学入試方法は、地域の中小・個人塾にとって有利な状況になりつつあります。

かつての大学入試は、国公立ならばセンター試験と二次試験を受けるというのが当たり前でした。また私学も、一般入試(たいてい3科)が主流でした。そのため、高校3年生になってから集中して受験勉強に励めば間に合う…そうした風潮が一般的だったものです。そこに登場したのが映像教材です。1年間の集中学習・速習によって志望校合格を勝ち取るというのが、多くの受験生に支持されました。ところが現在、様々な入試方法が登場し、全体の半分以上が「一般入試以外」になっています。私学の指定校推薦・一般推薦・AO入試(総合型選抜入試)等はもちろん、国公立も推薦入試の導入を進め、40%程度の推薦枠を目指しています。

ご存じのように推薦は、高校1年から3年1学期までの内申点が大きな比重を占めています。とても3年生のインターハイ予選終了後から間に合う話ではありません。1年生の時からコツコツと学習を重ね、定期考査で成績を残し、内申点を積み上げていく必要があります。まさに中小・個人塾の得意とする分野です。

「高校3年生になった時、望めば指定校推薦が貰える位置にいることは、大学受験にとって大きなアドバンテージです。そのまま推薦資格を取ってもよし、もうワンランク上の大学を目指して一般受験を目指すもヨシです」-こうしたプレゼンを中学生&保護者に展開し、そのまま塾に残ってもらえるような戦略を構築します。もちろん、生徒の実情に合わせたカリキュラムの作成やテスト対策等は必要です。今は学校授業に合わせることが可能なスモールステップ式の学習ソフトもあります。

こうして対象学年を高校生まで広げ、充実させることが、中3終了時の「卒塾」という名の退塾を防止する最大の方法です。

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