石上 誠(いしがみ まこと) 個別指導塾専門コンサルタント 塾長スクール 代表 有限会社 明誠館 代表取締役 ■早稲田大学商学部卒業。学習塾勤務の後、アメリカで半年間の「語学留学&放浪の旅」を経て、27歳で愛知県安城市に小中学生対象の学習塾「明誠館」を開校。
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記録的な酷暑の中、各塾長先生は夏期講習の真っ最中でお疲れのことと思います。あらためて、暑中お見舞い申し上げます。
さて、前回のブログでは、「生徒と保護者に、夢と希望を与えること」が大切であるとお伝えしました。今回は「予告通り」、その具体的な方法についてお話しします。
まず、この「生徒と保護者に、夢と希望を与える」タイミングは、生徒が通塾している期間ならいつでも可能ですが、間違いなく「入塾前の初回の面談時」がベストです。そして、このタイミングで、「この塾は、今まで通っていた塾や周りの塾と全然違う!」と、衝撃的な感動を与えることがポイントです。
その手順について、クライアントの塾長先生には時間をかけて指導をしていますが、詳細は長くなるのでここでは割愛し、中学生の親子の「初回の面談時の要点」だけを説明します。
結論から言うと、「大学進学を見据えた志望高校選び」のアドバイスを行い、親子に将来への「夢と希望を与える」というものです。と言ってもその方法は至ってシンプル。
「将来、お子さんの大学進学はお考えですか?」と聞くだけです。(生徒・保護者双方の希望を聞くのが原則ですが、大半のケースで生徒自身が明確な意思を持っていないので、保護者中心になると思われます。)
保護者の答えは、以下の3つに分かれますので、対応について簡単に説明します。
①大学進学を希望している場合は、できるだけ具体的な志望校を聞く。
⇒そのためにどの高校に進学すべきかをアドバイスし、合格に必要な内申点や定期テストの点数を明示する。進学に関して前向きな保護者なので、「当塾の方針で頑張れば、志望校の進学高校に合格できる」という安心感を伝える。
②大学進学を希望していない場合は、その理由を聞く。
A「成績が低いので大学は無理」と言う場合
⇒今の成績が9教科の内申点合計が「22~25」レベルでも、英語と数学が「3」あれば、「オール3で合格できる公立高校普通科」か「推薦入試での私立高校普通科」を志望高校にして、「高校入学後は上位〇〇番に入れば、△△大学なら合格できる」という事実を具体的に提案する。
B「学力的に国公立大学は無理。お金がないので私立大学も無理」という場合
⇒「お金がないから大学に行かせない」と言う保護者は、大学進学のメリットを感じていないので、まずは後述の③のように、様々なメリットを伝える。
その上で、「家から通える私立文系なら、4年間総額500万円で足りる」という現状を示す。
また毎年の授業料の補助として、「日本学生支援機構の奨学金なら、大学在学中の4年間に毎月3万円(総額144万円)を無利子で借りて、卒業後の12年間で毎月1万円を返す」という無理のない借入計画をアドバイスする。
③大学進学は、まだ何も考えていない場合
⇒「大学進学率は50%、首都圏では60%を超えている事実」、
「公務員も一般企業も、就職の募集要件は『大卒』の比率が圧倒的に多くなっている事実」、
「大卒は高卒と比較して、生涯収入が5000万円多いという統計」、
などを説明して、大学進学のメリットを伝える。
要は、親子ともに大学進学にあこがれを持たせて「絶対に大学に行きたい(行かせたい)!」と思わせること。また、「大学に行かせたいが、学力的・経済的に無理」と思っているなら、解決方法を提示して安心させることが肝心です。
塾長先生は職業柄、「大卒」の学歴を持った方が圧倒的に多いと思いますが、保護者(特に母親の場合)は「高卒」の学歴の方がかなり多いと思われます。ある調査では、「両親ともに高卒の場合、その子どもの7割が高卒」となり、「両親ともに大卒の場合、その子どもの7割が大卒」となるそうです。解説をすれば、「大卒の親は、大卒のメリットを感じているので子どもにも大学進学を勧めるが、高卒の親は、大卒のメリットをあまり知らないので、大学進学は子どもの意志に任せている」ということです。
先生の塾が「進学塾」なら、生徒の両親は大学進学に熱心ですから、先生がハッパをかけなくても親子ともに「大学に行くのは当たり前」と考えています。しかし、(失礼ながら)一般的な「個人塾」や「個別指導塾」なら、大学進学のメリットを実感として持っていない親子が多いことが想像できます。
塾を何年もやっていると、幾度となく生徒から「何のために勉強をするの?」という究極の質問を尋ねられたことがあると思います。もちろん、人生は学歴だけによって左右されるものではありません。しかし、塾長先生の仕事は「塾屋」です。当然、「勉強を通じて、生徒を成長させること」を保護者から求められています。間違っても「勉強なんかできなくてもいいんだよ」とか「中途半端な大学に行くくらいなら、高校を出て早く働いた方がいいぞ」などと無責任な対応をしてはいけません。なぜなら塾を開いて保護者から授業料をもらっておきながら、「勉強の必要性なんて、特にないんだよ」という自己矛盾を露呈することになるからです。
私の塾長時代には、上記の生徒からの質問に対しては、綺麗ごとや難しいことを言わずに、「大学に行って、いろんな人と出会って、いろんな経験をして、楽しくて有意義な人生を過ごすための準備だよ」と答えていました。そして、「もし生まれ変わっても、絶対に大学には行きたいと思っているよ。大学は楽しいぞ!」と、大学でどんなに楽しいことがあったかを具体的に話したり、大学時代のサークルの写真を見せてあげました。
そういう話を聞くと、生徒は「えっ、そんなに大学って楽しいの? 私も行ってみようかな・・・」と初めて大学進学を自分の将来のこととして捉えるようになります。
「次の定期テストは頑張ろう!」と先生が訴えても、点数が上がった結果として手に入れられるものが具体的でないと、生徒の反応は鈍いものです。しかし、入塾時の段階で生徒に『絶対に大学進学する!』という明確な夢と希望を与えておいた上で、「次のテストで5教科合計100点上げて、内申点合計を5つ上げれば、〇〇高校に合格できる。その高校で頑張れば、お前も△△大学に入れるぞ!」と訴えた方が、生徒がやる気になることは言うまでもありません。
そのために、塾長先生独自の『大学進学のメリット』をしっかりと構築して、今後の新規入塾の親子面談だけでなく、自塾生の親子面談や高校入試説明会を企画して、「全生徒と保護者に『大学進学』という夢と希望を与える塾」を目指してください。